※この記事は個人の体験談です。医療的判断は必ず担当医にご相談ください。
「タイミング法より、少しでも妊娠の可能性が上がるなら」。そんな気持ちで、私は人工授精に進みました。
タイミング法を2周期経験しても妊娠せず、人工授精は3回。費用も時間もかかりましたが、私の場合は結果につながりませんでした。
この記事では、20代後半だった私が実際に受けた人工授精について、人工授精とは何か、通院回数・費用(3回で33,750円)・処置の流れ・痛み、そしてなぜ3回で体外受精へステップアップしたのかを、体験をもとにまとめます。現在の治療とは制度や費用が異なるため、あくまで一個人の体験談としてご覧ください。
人工授精とは?
人工授精は、排卵の時期に合わせて、採取した精液から良好な運動精子を集め、子宮内に注入する治療です。日本産科婦人科学会の一般向けページでも、タイミング性交や排卵誘発などと並ぶ不妊治療の一つとして説明されています。
詳しい定義や現在の治療の位置づけについては、日本産科婦人科学会「不妊症」をご確認ください。
また、現在は人工授精を含む一般不妊治療が保険適用の対象となっています。2022年4月から制度が変わっているため、私が治療した当時の費用を現在の治療費として参考にすることはできません。現在の制度については、こども家庭庁「保険適用について」が分かりやすいです。
なぜ人工授精を受けることになったのか
私の場合、タイミング法を2周期経験しても妊娠しませんでした。
人工授精へ進む話は、かなり急に決まった記憶があります。進むかどうか考えられたのは一晩くらいだったでしょうか。
当時の私は、「タイミング法より少し費用がプラスになるくらいで、妊娠する確率も少し上がるなら、時間を無駄にするよりはやってみるか」という程度の気持ちでした。
もちろん、本当にこれで妊娠できるのかについては、かなり懐疑的でした。
当時、医師からは、夫の精子について「数は多くないけれど、その中に良い精子がいる」という趣旨の説明を受けていました。検査値に問題はありませんでしたが、平均よりは少なめで、医師は「少数精鋭」と表現していました。そして、人工授精なら精子を子宮内まで届けられるので、私たち夫婦には合っているのではないか、という説明だったと記憶しています。
それなら、少しでも可能性が上がるならやってみよう。そんな判断でした。
私が受けた人工授精3回の記録と費用
1回目:13,130円
1回目は、排卵を促す薬(クロミッド)を使い、さらに排卵を促す注射(ゴナールエフ)も行いました。そのため、3回の中では費用が高めです。
私はもともと注射が大嫌いなので、この「注射がある周期」は、それだけでかなり嫌でした。
当時の領収書をもとに集計した費用は13,130円です。
2回目:8,530円
2回目は卵胞の発育が順調で、注射を使わずに人工授精まで進めました。そのため、1回目より費用は抑えられ、8,530円でした。
なお、この回は排卵を見張っていたのに人工授精が排卵後になってしまい、「排卵時には精子を待機させておく」という考え方をカバーできていませんでした。
3回目:12,090円
3回目は再び薬と注射を併用したため、12,090円でした。
3回の人工授精にかかった費用を合計すると、33,750円です。
これは私が治療を受けた当時の、保険適用での費用です。診療報酬や薬価は毎年変わるため、現在治療を受ける場合の費用とは異なる可能性があります。
タイミング法との併用
医師から、人工授精と並行して夫婦でタイミングを取ってもよいとアドバイスがありました。
1回目と3回目は、人工授精の当日を挟む形で、3日に1回、合計3回タイミングを取りました。2回目は、スケジュールや体調の折り合いがつかず、見送りました。

人工授精当日の流れ|時間・採精・容器・服装・処置の様子
私が通っていた病院では、人工授精の日は夫の精液を持参し、それを処理してもらった後、私が呼ばれて子宮内に注入してもらう、という流れでした。
家で夫の採精を待っている時間は、正直かなり気まずかったです。さらに、採取したものを病院へ持っていくのも、かなり気まずい(笑)。
採取後は2時間以内に精子を病院内の窓口に提出し、30〜40分くらいでクリーニングされて、準備ができると私が呼ばれ、内診台で処置を受けます。
器具が入るときは、言われてみれば「確かに何か入っているな」と分かる程度で、私の場合はたいして痛くありませんでした。すでに不妊治療で何度も内診を受けていたこともあり、恥ずかしさについては、この頃にはほぼどこかへ消えていました。
精子が注入される感覚も、同じく「言われたら何か入っているかな?」くらい。処置後は内診台の上で1分ほど待ち、その後は普通に帰宅しても、会社へ行ってもよいという説明でした。お風呂についても特に制限はなく、思っていたよりずっとあっさり終わりました。
持ち物
服装や持ち物について、病院からの注意は特にありませんでした。
ただ、不妊治療全般で、上下がつながったオールインワンは避けたほうがよいです。下だけ脱げばよい処置でも、全部脱がなければならなくなるからです。(ワンピースは下半身部分だけペロっとめくればいいだけなので、というか一番ラクで、おすすめです。)
精液を入れる容器は、病院から指定のものを渡されます。綿棒100本入りで売っているような寸胴の円柱形で、フタを回して閉めるタイプでした。光を遮る紺色のビニール袋に入れて持ってくるよう指示があり、説明書きをもとに丁寧に説明を受けました。

人工授精は痛い?痛みと身体の負担
私の場合、人工授精そのものによる身体的な負担は、ほとんどありませんでした。
器具を入れるときの違和感はありましたが、強い痛みはなく、処置も短時間。終わった後も普段通りに過ごせました。
ただし、私にとって一番つらかったのは、処置そのものではありませんでした。
人工授精をした後、毎回約2週間待って、結局生理が来るという形で判定がついてしまうこと。
これが本当に嫌でした。
「今回はいけるかも」とは、なぜか思わなかった
人工授精を3回受けましたが、「今回はいけるかも!」と思った回はありませんでした。
タイミングについては医師から指示された通りにしているのだから、少なくとも自分たちができることはやっている。そういう意味では、毎回かなりフラットな気持ちでした。
期待しないようにはしていました。でも、完全に期待しないなんて無理です。そして生理が来ると、やっぱりものすごくテンションが下がる。
人工授精は意味ない?3回とも妊娠しなかった私が感じたこと・メンタル
3回目も妊娠しなかったとき、最初に出てきた感想は「は?」でした。
私はこれまで、部活も、受験も、留学も、就職活動も、自分なりに努力して解決してきたつもりでした。
ところが妊娠だけは、努力しても、その分だけ結果が返ってくるわけではない。
人工授精では、タイミングを合わせるために通院して、必要なら薬や注射も使って、夫にも協力してもらって、お金も払っている。それなのに、結果が伴わない。
当時の私にとっては、頭では理解しようとしても、感情がついてきませんでした。
身体的な負担そのものは、今振り返ってもほとんどありません。精神的な負担は、妊娠できずに生理が来ることを含めると、私の場合は10段階で8くらい。時間的な負担は3くらい、金銭的な負担は5くらいでした。どちらも体外受精と比べればまだ小さい、という意味での数字です。
結局、一番つらかったのは、処置ではなく「妊娠しなかったこと」でした。
人工授精は何回まで?3回で体外受精へステップアップした理由
人工授精を3回終えても妊娠しなかった私たちは、体外受精へ進むことになりました。
理由はシンプルで、時間がもったいなかったから。
当時の私には、人工授精をさらに何回も続けることが、あまり合理的には思えませんでした。タイミング法と人工授精で大きく結果が変わるという感覚も持てなかったので、「それなら、次のステップへ進もう」と考えました。
もちろん、治療の進め方は年齢や原因、精子の状態などによって異なります。日本産科婦人科学会も、一般的な治療の流れとしてタイミング性交、排卵誘発、人工授精、体外受精・顕微授精などを挙げていますが、すべての人が同じ順番・回数で進むわけではありません。
私の場合は「3回やったから必ず次へ」というより、これ以上この方法に時間を使うより、次へ進みたいという気持ちが強かったのだと思います。

夫はどうしていた?
夫はもちろん協力的でした。
ただ、私が生理が来るたびにかなり自暴自棄になるので、夫も内心どう思っていたのかは分かりません。それでも、私に対して無理にでも「大丈夫だよ」という雰囲気を出してくれていました。
人工授精は夫側にも採精という役割があります。病院に精子を持っていくという、夫婦どちらにとっても少し気まずい作業を毎回こなす必要がありました。それでも夫が協力してくれたことは、今振り返ってもありがたかったと思います。
今振り返って、人工授精3回をどう思うか
正直に言えば、人工授精そのもので妊娠できなかった私にとっては、「結果だけ見れば、何だったんだろう」と思う治療です。
でも、だからといって、人工授精を受けたことが完全に意味のないことだった、とも言い切れません。
当時の私たちにとっては、いきなり体外受精へ進むのではなく、その前に踏むステップとして必要だったのだと思います。
そして、その後に体外受精も経験しましたが、そちらでも妊娠できたわけではありません。
不妊治療をしていた時間や、妊娠できないことへの絶望感は、今となっては自分の人生の一部になっています。待ったからこそ、その後に授かった子どもを、治療を経験していなかった場合よりも強く愛せているような気もします。
もちろん、これは結果論です。歴史に「もし」はないので、本当にそうなのかは分かりません。
それでも、できることなら、あれほど苦しい思いをせずに授かれたほうがよかった。今でもそう思います。
人工授精を受けようとしている方へ
私自身は、人工授精を3回受けても妊娠しませんでした。
ただし、これは私一人の結果です。人工授精が向いているケースもありますし、男性側の要因や性交が難しい場合など、人工授精を選択する理由もあります。日本産科婦人科学会も、精子の数や運動率、性交の障害などに応じて人工授精を行う場合があると説明しています。
だから、「人工授精は意味がない」とこの記事から結論づけてほしいわけではありません。
私が今の自分から当時の自分に言うなら、「どのくらいの効果を期待していて、何回くらい試すつもりなのか、費用や時間も含めて医師に確認してから決めてもよかったね」と言うと思います。
治療を受けるかどうか、何回続けるか、いつ次の治療へ進むか。正解は一つではありません。この記事が、人工授精という治療を知るための一つの体験談になればと思います。
まとめ
- 人工授精を3回経験
- 費用は1回目13,130円、2回目8,530円、3回目12,090円、合計33,750円
- 人工授精そのものの痛みはほとんどなかった
- 私にとって一番つらかったのは、処置ではなく「妊娠できず生理が来ること」だった
- 3回とも妊娠せず、時間を優先して体外受精へステップアップした(人工授精は何回まで続けるかは、年齢や原因によって異なるため、医師に確認して決めるのが大切です)
人工授精は、私にとっては「少しでも可能性を上げるなら」と選んだ治療でした。
結果は出ませんでしたが、その経験も含めて、今の私があります。
※本記事に記載している通院回数・費用・経過などは、全て筆者個人のケースです。症状や治療方針には個人差がありますので、疑問や不安がある場合は必ず担当医や専門機関にご相談ください。
